流体密度が変化し全重量が配管系にとって重要な意味を保つ場合、流体密度乗数 (Fluid Density Multiplier) (FDM) を用いて、既知の温度条件に基いて静的荷重ケースを調整することができます。
基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログ では、流体密度 (Fluid Density) の入力値は1つです。しかし、配管系の運転において、流体密度は運転圧力に比例し、運転温度に反比例しますので、変化します。多くの配管系では、流体密度に対する圧力の影響とそれを打ち消す温度の影響が相殺されます。他の運転条件では、流体密度の変動は大きな影響を与えます。
この流体密度の影響を考慮するために、CAESAR II は 流体密度乗数 (Fluid Density Multiplier) を 静的解析 - 荷重ケース編集 (Static Analysis - Load Case Editor) ダイアログ (静的荷重ケースエディタ (Static Load Case Editor) とも呼ばれる) に組み込みました。流体密度の基本となる雰囲気中の値を 基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログ で設定します。流体密度乗数 (Fluid Density Multiplier) は 静的荷重ケースエディタ (Static Load Case Editor) での 応力タイプ (Stress Type) OPE、SUS、HGR など、どの基本荷重ケースにも設定することができます。そして、ソフトウェアは、それぞれの荷重ケースで流体密度の値を増減します。流体密度乗数 1.2 は流体密度を 20%増加させ、0.9 の場合は 10%低減させます。
流体密度乗数 (Fluid Density Multiplier) 合成荷重ケースでは有効ではありません。
例
配管モデルで 2つの荷重条件があり、流体密度 (Fluid Den) 1 が雰囲気温度、大気圧下で 0.0358 lb/cu in であるとします。温度 (Temp) 1 が 400°F で流体密度は 15%低減 し 0.0304 lb/cu in であるとします。圧力 (Pressure) 2 が 3000 psi で流体密度は 10%増加し 0.0394 lb/cu in であるとします。
流体密度 (Fluid Density) 1 - 0.0358 (雰囲気) 2 - 0.0304 (15%低減) 3 - 0.0394 (10%増加) |
静的荷重ケース編集 (Static Load Case Editor) で、OPE 荷重ケース T1 (温度 1) では 流体密度乗数 (Fluid Density Multiplier) を 0.85 (15%低減) とし、OPE と SUS 荷重ケース P2 (圧力 2) では 1.10 (10%増加) とします。Alt-SUS ケースは自動的に、対応する OPE 荷重ケースと同じ FDM となって表示されます。ソフトウェアは、雰囲気温度での通常の SUS 荷重ケースを解析し、FDM はデフォルトの 1.0 のままになります。
解析の間、FDM は影響のある荷重ケースに対して配管系の総重量を変更します。ソフトウェアは、調整された重量で、変形、支持反力と応力を解析します。配管系入力 (Piping Input) で流体密度をマニュアルで増加/低減したときと同様の影響となり、さまざまに流体密度を変えて解析を複数回行うことと同じです。
静的解析出力プロセッサ (Static Output Processor) では、FDM を使う場合に、すべての 標準 (Standard) レポート に適用することができます。解析条件と設計データ (General Computed Results) > 荷重ケース Load Case) レポート で FDM 係数を確認することができます。
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荷重ケース T1 と P2 とを合成した荷重ケースを作成する場合、流体密度乗数は T1 と P2 とで反対の効果があり相殺するので、FDM は 1.0 とします。
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FDM は 荷重 W の中の流体成分に影響を与えますが、WW あるいは WNC そのものには影響を与えません。FDM をゼロとすると、結果は WNC と同じになります。
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また、FDM は G単位での分布荷重 (Uniform Load in Gs) にも適用されます。