「ミクロ」レベルでの応力解析では、個々の材料と複合材料の境界メカニズムの詳細評価のために行われます。一般に、FRP管は多層構造で製造され、E-glass と呼ばれる市販のカラス繊維を伸長した繊維を結合材でコーティングするか、あるいは熱硬化性のプラスチック材料であるエポキシまたはポリエステル樹脂で固めたにじみ防止剤 (sizing) が被覆してあります。
ミクロスケールでの解析モデルは、要素間の相互作用をシミュレーションするためのものです。FRPサンプルの位置における繊維の数と方向が不明で、単純なミクロモデルの代表が 1つの繊維であり、サンプルの長さに伸ばし、正方形の母材に固めたものです。
このモデルでは、次の材料パラメータを使用します:
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ガラス繊維
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結合材、またはにじみ防止剤 (sizing) 層で、通常はミクロ的な比率は無視されます。
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プラスチック母材
これらの材料パラメータは、負荷される応力が引っ張り、圧縮、あるいはせん断であるかによって個々の材料ごとに異なります。標準的な値は、繊維と母材によって大きく異なります (参照 5):
縦弾性係数 |
引っ張り強さ |
熱膨張係数 |
|
---|---|---|---|
材料 |
引っ張り (MPa) |
引っ張り (MPa) |
m/m/ºC |
ガラス繊維 |
72.5 x103 |
1.5 x 103 |
5.0 x 10-6 |
プラスチック母材 |
2.75 x 103 |
.07 x 103 |
7.0 x 10-6 |
評価すべき複合材の損傷モードは次のとおりです:
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繊維の損傷
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結合材層の損傷
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母材の損傷
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繊維結合材の接着の損傷
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結合材-母材間の接着の損傷
繊維が結合材とどの程度結着しているか、またこれらの損傷モードの定量性に不明確なところがあるため、評価は結局のところ次のように整理されます:
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繊維の損傷
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母材の損傷
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繊維-母材間の損傷
個々の要素の応力は、ひずみ連続性と平衡状態方程式から、繊維と母材の良好な結合を仮定して 2つの間のひずみ互換性を利用して、有限要素法を用いて評価することができます。ガラス繊維に平行に作用する垂直応力は次のようになります:
ef= em = saf / Ef = sam / Em
saf = sam Ef / Em
Where:
ef = 繊維のひずみ
e = 母材のひずみ
saf = 繊維内の繊維に平行な垂直応力
Ef = 繊維の縦弾性係数
sam = 母材の繊維に平行な軸垂直応力
Em = 母材の縦弾性係数
母材に対する繊維の縦弾性係数の比率は非常に大きいことから、繊維-母材複合材のすべての軸垂直応力は繊維によって伝達されます。次の式で表すことができます (参照 6):
saf = sL / [f + (1-f)Em/Ef]
sam = sL / [fEf/Em + (1-f)]
ここで:
sL = 複合材の垂直長手方向応力
f = 体積によるガラス量
ガラス-母材複合材の連続の式は、次の図に示すように、材料の弱い部分はガラスのない断面に限られますので、繊維に垂直な垂直応力はそれほど複雑にはなりません:
このため、複合材の強度はこの方向の母材の強度と同じになります。実際には、補強されたガラスの近傍での不均一な応力分布による応力集中で、母材よりもこの強度が小さくなります。距離 D1 にわたっての伸長は、より長い距離 D2 と等しくなりますので、D1 での応力は D2/D1 だけ D2 よりも大きくなります。集中した横方向直応力は次のようになります:
ここで:
sb = 複合材の繊維を横断する集中した垂直応力
s^ = 複合材の公称横方向垂直応力
nm = 母材のポアソン比
ポアソン効果によって、この応力は付加的な応力 s'am が生じ、これは次のようになります:
s'am = Vm sb
せん断応力は、個々の要素で生じ、連続の式で表すことができます。固いガラスがせん断応力に抵抗します。繊維が無限の長さでない限り、すべてのせん断応力は繊維間の母材にわたって等しくなります。繊維と母材の間のせん断応力は、次の式で推定することができます:
ここで:
tab = 複合材の集中したせん断応力
T = 複合材を横切る公称せん断応力
Gm = 母材のせん断弾性係数
Gf = 繊維のせん断弾性係数
繊維と母材相互の応力を算出するのはより難しくなります。接着剤の厚さは評価不可能で、連続の式に剛性を考慮することができません。また、相互の挙動はせん断、引っ張りと圧縮では全く異なる挙動を示し、見かけ上は何ら影響がないと考えられます。したがって、応力状態について相互作用は、連続の式からその寄与を無視して解くことがもっとも妥当な解法になります。単に、繊維から母材に応力を伝達すると考えます。
応力状態が決まれば、適切な損傷モードに対して評価しなければなりません。ガラスやプラスチック樹脂のような均一な等方性の挙動は、多軸応力場でよく知られています。等方性の材料の損傷モードは、垂直応力とせん断応力 (sa,sb, sc, tab, tac, tbc) を1つの応力に合成して等価応力として、単軸応力場の材料の損傷に至る引っ張り応力として表すことができます。すなわち、引っ張り強さ Sult になります。
異なる理論、異なる等価応力関数 f(sa,sb, sc, tab, tac, tbc) が提案されていますが、もっとも広く受け入れられているのは Huber-von Mises-Hencky の破壊基準で、損傷は等価応力が限界値、すなわち材料の引っ張り強さになったときに起こるというものです:
seq = Ö{1/2 [(sa - sb)2 + (sb - sc)2+ (sc - sa)2 + 6(tab2+ tac2+ tbc2)} £ Sult
この理論は、繊維の損傷モードをすべて表してはいません。引っ張りと圧縮などの応力の方向性についての違いはありません。繊維は比較的長く薄い場合には、圧縮荷重が作用すれば座屈が支配的になります。
等価応力での破壊基準は、試験によって幾分非安全側ですが確認されています。接着部の接合面に関する破壊基準はあまりよく知られていませんが、実験的な結果としては、垂直応力とせん断応力の 2乗に線形で関係しているとされています。複合材料の破壊試験から、横垂直応力とせん断応力のみの関係は次の図のようになります。線図の折れ曲がりは、母材から接合に至る遷移を示しています。