CAESAR II では、初期のバージョンから FRP のような直交異方性材料を扱う機能を有しています。特に、BS 7159 と UKOOA の要求事項を満足する計算が行えます。さらに最近では ISO 14692 の要求事項を満足する計算が行えます。多くのメーカーに対応する FRP材料パラメータを CAESAR II は用意しています。ユーザーはどの FRP配管を使うかをデフォルトで設定することができます。他のオプションとして、BS7159 で圧力による剛性の硬化を設計ひずみ、あるいは実ひずみのどちらで考慮するのかを CAESAR II の環境設定ファイルで設定することができます。
CAESAR II の材料データベースで、材料 (20) FRP (FIBER REIN PLASTIC) が直交異方性のプラスチック (FRP) になり、 選定された材料に対して適切な直交異方性のパラメータをデータベースから抽出することができます。
直交異方性の材料モデルを使用する場合、等方性材料の 2つのフィールドが次のように変更されます: 縦弾性係数 (Elastic Modulus) (C) を 軸方向の縦弾性係数 (Elastic Modulus/axial) に、ポアソン比 (Poisson's Ratio) を Ea/Eh*Vh/a に変更 (下図参照)。
直交異方性モデルは等方性モデルよりも多くのパラメータが要求されるため、これらの変更が必要となります。たとえば、材料に対して 1つの縦弾性係数ではなく、軸と円周の 2つの縦弾性係数になります。ポアソン比はひとつではなく、2つあります: nh/a は円周方向の応力によるひずみでの軸方向のひずみに対するポアソン比です。na/h は軸方向の応力によるひずみでの円周方向のひずみに対するポアソン比です。また、等方性材料とは異なり、せん断弾性係数は G = 1 / E (1 - n) の関係式が成り立ちませんので、明確にせん断弾性係数の値を入力する必要があります。
入力を最小限にするために、これらのパラメータのいくつかは合成されてソフトウェアで使われています。一般に、圧力による伸長の計算では円周方向の縦弾性係数、あるいはポアソン比が使われます。円周方向の縦弾性係数は BS7159 での許容応力を決定するために使われることに注意してください:
dx = (sx / Ea - nh/a * shoop / Eh) L
ここで:
dx |
= |
圧力による配管要素の伸び |
sx |
= |
配管要素の圧力による長手方向応力 |
Ea |
= |
軸方向の縦弾性係数 |
nh/a |
= |
円周方向の応力によって生じるひずみでの軸方向ひずみに関係するポアソン比 |
shoop |
= |
配管要素の圧力による円周方向応力 |
Eh |
= |
円周方向の縦弾性係数 |
L |
= |
配管要素の長さ |
この式は、1つの新しいパラメータのみを使って次のように表すことができます:
dx = (sx - shoop * (Ea / Eh * nh/a)) * L / Ea
理論上、1つの新しいパラメータ (Ea / Eh * nh/a) は na/h に等しく、dx = (sx - na/h * shoop) * L / Ea になります。
材料のせん断弾性係数は、剛性マトリックスを作成する際に必要になります。CAESAR II では、この値を縦弾性係数の比で表しており、選択された材料によって指定されているか、あるいは配管スプレッドシート上の 環境設定 (Environment) メニューから 特殊実行パラメータ (Special Execution Parameters) ダイアログで、ジョブごとに指定できます。このダイアログでは、指定した材料のメーカーのデータベースファイルか、あるいはユーザーの入力によって指定された熱膨張係数も表示され、BS7159 で定義されたデフォルトの積層の種類も表示されます。積層の種類を次に示します:
-
Type 1
すべての内外層を強化したチョップドストランドマット (CSM)
-
Type 2
内外層を強化したチョップドストランドマット (CSM) でウォーブンロービング (WR) (ストランドを、さらに所定の番手になるように数10本を引き揃えて束にした製品)
-
Type 3
内外層を強化したチョップドストランドマット (CSM) で多層のロービングをしたもの
積層の種類は、ベンドのたわみ係数と応力集中係数の計算に用いられます。
ベンドと分岐の情報は、補助スプレッドシートで容易に入力できます。
次の図のように、ベンド半径と積層の種類はベンドごとに変更することができます。
BS 7159 の製作ティーと成型のティーは CAESAR II のティーの種類 1 と 3 としてそれぞれ継手に登録されています。CAESAR II は規格に従って、これらの継手の適切なたわみ係数と応力集中係数を自動的に計算します。
必要な規格データは、許容応力補助スプレッドシートで入力します。FRP材料の規格 (BS7159 は 27番、UKOOA は 28番で利用できます) に対応しています。BS 7159 では、CAESAR II は次のパラメータを用意しています:
SH1 から SH9 = 長手方向設計応力 = ed ELAMX
Kn1 から Kn9 = 繰り返し応力範囲低減係数 (BS 7159 paragraph 4.3.4 による)
Eh/Ea = 軸方向縦弾性係数に対する円周方向縦弾性係数の比
K = 温度差乗数 (BS 7159 paragraph 7.2.1 による)
UKOOA を選択した場合、CAESAR II で入力すべき規格パラメータは次のとおりです:
SH1 から SH9 = 円周方向設計応力 = f1 * LTHS
R1 から R9 = 比 r = (sa(0:1) / sa(2:1))
f2 = システムの安全率 (省略した場合のデフォルトは 0.67)
K = 温度差乗数 (BS 7159 と同じ)
これらのパラメータは、配管系で変更がなければ 1回だけ入力してください。
解析の実行はモデリングよりも単純です。<Product> は運転パラメータを評価して、適切な荷重ケースを自動的に作成します。この場合には、次の3つが作成されます:
-
配管と流体の重量、温度、機器変位と圧力などを含む運転荷重。このケースでは最大規格応力とひずみ、運転時の機器と拘束点荷重、ホット時の変位などを計算します。
-
Cold (温度と機器の変位を除いた上記荷重)。このケースでは、コールド時のノズルと拘束荷重を計算します。
-
Expansion (コールド時とホット時の繰り返し応力範囲としての熱膨張荷重)。このケースでは、BS 7159 規格の paragraph 4.3.4 に従った疲労基準を満足するか評価します。
これらの荷重によるシステムの応答を解析して、CAESAR II は出力オプションメニューを表示します。レポートは、荷重の組み合わせ、変位、拘束荷重、要素断面力、応力の結果を選択できます。応力レポートから、ユーザーはシステムが応力制限の要求事項を満足しているかどうかを判断できます。
UKOOA規格では、運転時の応力が次の図の直線で示される理想的な応力包絡内にあれば、配管は許容値内であると判断することができます。